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快楽を追求する幸福と目的を追求する幸福-レジリエンス資源を蓄積する方法3

皆様、こんにちは。

レジリエンス研修講師ポジティブ心理学コーチ、iEP認定MBAエグゼクティブコーチ®の松岡孝敬です。

今日も、ブログをご愛読いただき、誠にありがとうございます。

年明けからいただいた年賀状を拝見しますと、私のブログをお読みいただき、楽しみにされているというコメントをいくつかいただき、大変恐縮するとともに、嬉しくなりました。ブログを書くモチベーションが俄然高まってまいりました。

前回のブログで、目的意識を持つことの重要さを記しました。覚えていらっしゃいますでしょうか?お忘れの方は、再度、ブログをお読みいただければ幸いです。

2021.1.4 ブログ 新年 あけましておめでとうございます!

目的意識は、レジリエンス資源の1つですし、現実的な目標を持つことは、アメリカ心理学協会が発表している「レジリエンスを築く方法」の1つでもあります。

アリストテレスが説く幸福になる2つの方法とは

私たちは普段からよく「幸福」、「幸せ」という言葉を使ったり耳にしたりします。ところが「幸福とは何でしょうか?」と聴かれると、直ぐに答えられる人は少ないのではないでしょうか。

幸福は、古くから哲学者、宗教家、心理学者の重要なテーマになっており、それぞれ定義が違っており、多岐にわたっていますね。共通する部分もあるし、微妙に異なるところもある。とても興味ある、深く思索するに値する概念と思います。

古代ギリシャの哲学者、アリストテレスは、幸福を追求する方法は、大きく2つに分かれると説いています。一つは、「利己的な目先の快楽を追求する方法」で、専門用語で表現すれば「ヘドニズム」と言います。もう一つは、「内なる良い精神と調和する方法」で、これも専門的には「ユーダイモニズム」と表現します。

いいかえれば、アリストテレスは、幸福になる方法を、「快楽を追い求める方法」と、「目的を追求する方法」の2つがあると説いているのです。

その2つの方法に対するアリストテレスの見解は、利己的に「快楽を追い求める方法」は、原始的で野蛮であり、良心と調和して「目的を追求する方法」は、高貴で純粋であるとして支持しています。

幸福になる2つの方法には、人類の進化が深く関係している

アリストテレスは大哲学者ですし、自身の名前の由来も、実はギリシャ語の「最高の目的」からくるくらいですので、幸福になる方法として「目的を追求する方法」(ユーダイモニズム)を支持するのも納得できます。では、「快楽を追い求める方法」(ヘドニズム)が、幸福になる方法として、支持されないものかというと、決してそんなことではありません。

幸福になる2つの方法、ヘドニズムとユーダイモニズムは、人類の進化の歴史と深く結びついています。

私たち人間の脳は、進化の過程で、危険を回避する回路(危険回避脳)と、快楽を追求する回路(快楽追求脳)の2つの回路の機能を発達させることで生存してきました。危険回避脳は、人間の生存を脅かすさまざまな脅威、例えば外敵からの攻撃、自然災害、食糧不足からの飢餓などをいかにして回避して生き残るために機能します。一方、快楽追求脳は、生存し続けて種を保存するための欲求、例えば、食欲、性欲などを追求するために機能します。いずれも生きていくために必要な機能ですよね。

つまり、人類の初期は、「幸福=快楽追求もしくは危険回避」であって、その頃の幸福になる方法は、唯一、「快楽を追い求める方法」しかなかったのかもしれません。

一方で、人類は進化の過程で社会的な生活を送るようになり、次第に、「快楽」だけではなく、「意義」や「目的」を追求するようになりました。他者との集団活動、集団生活をすることが目的となり、それらに意義を見出すように進化したと考えられます。その方が、人類の生存には有利だからと思われます。

私たち人類は、生態系の中ではとても弱い生物で、一人で生きるよりも集団生活を行って周囲の人々と助け合う方が、断然、生き残りやすいです。文明が興ってからのちは、人間によって構成される文明社会は、安定した人間関係をもとに成り立っており、私たち人間は、社会や他者とつながることで食糧を得ることができ、自然災害や外敵から身を守ることができます。

したがって、私たち人間は、本来、「快楽を追い求めて得られる幸福」も、良好な人間関係を基に成立する社会を維持することに意義と目的を見出し、それらに参加し、「つながりを求めることによって得られる利他的な幸福」も、両方追求するようにできています。ただし、「快楽」と「目的」のいずれかを多く求めるかは人によって異なります。「意義深い目的」よりも「快楽」を重視する人もいれば、その逆の人もいらっしゃいます。私個人の見解としては、「目的」に多く軸足を置きながら、「快楽」もバランスよく追求する方が良いように思います。

目的を追求する人は、グリット(やり抜く力)も高く、免疫力も高い

グリット(やり抜く力)の提唱者であるアンジャラ・ダックワースは、1万6000名のアメリカ人のグリット・スケールと、グリットの根底にあるモチベーションを調査しました。その結果、グリットの高い人は、そうでない普通の人々と同じレベルの「快楽を追求する」モチベーションがある一方で、グリットの高くない普通の人々に比べ、「意義ある人生を送りたい」、「他の人に役に立つ生き方をしたい」というモチベーションが著しく高いことがわかりました。

ダックワースは、この調査結果から、「グリットの極めて高い人は、自分にとっての究極の目的は、自分という枠を超えて人々と深くつながっていると考えている」と唱えています。そして、「目的」は、ほとんどの人にとって、強いモチベーションの源になっていると主張しています。

さらに、バーバラ・フレデリクソンらは、ヘドニズムとユーダイモニズムが遺伝子の機能に及ぼす影響を研究したところ、ユーダイモニズム、つまり「目的を追求する幸福」の方が、ヘドニズム、快楽を追い求める幸福よりも、免疫系の遺伝子の機能を高めることを明らかにしました。つまり、良心に基づき利他的な目的を追求することを幸福としてとらえる方が、健康になり、長寿になると考えられるのではないでしょうか。

A functional genomic perspective on human well-being
   Barbara L. Fredrickson, Karen M. Grewen, Kimberly A. Coffey, Sara B. Algoe, Ann M. Firestine, Jesusa M. G. Arevalo, Jeffrey Ma, and Steven W. Cole
PNAS August 13, 2013 110 (33) 13684-13689

目的を追求する幸福がグリットとレジリエンスを高める

ユーダイモニズム的な幸福、自分自身の内なる良心に基づき、他者に役立つことに意義を見出す利他的な目的を追求する幸福が、グリット(やり抜く力)を高めます。

目的意識は、グリットを高め、高いレジリエンスを築くレジリエンス資源となりますが、自分だけの快楽を求めることを目的意識として持つよりは、他者や社会に役立つことを目的意識として持つ方が、レジリエンス資源になり得るのではないでしょうか。

では、他者や社会に役立つ目的をどのように持てばよいのか。次回以降のブログで記したいと思います。ただし、ブログのテーマは、諸事情(多くは筆者の気まぐれ)により、変更になる場合もございます。予めご了承くださいませ。

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