レジリエンス資源としての他者
皆様、こんにちは。
レジリエンス研修講師、ポジティブ心理学コーチ、iEP認定MBAエグゼクティブコーチ®の松岡孝敬です。
今日も、ブログをご愛読いただき、誠にありがとうございます。
街は本格的な秋の装いとなり、年の瀬が近づき、慌ただしくなっていますが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
コーチング勉強会で気づいたこと
先日、同じコーチ養成講座出身者の仲間が集い、コーチング勉強会を行いました。
今回の勉強会は、養成講座に通う現役生が3名参加され、認定試験も近いので、それぞれコーチングセッションを公開で行っていただき、セッション修了後、参加者全員が気付いた良い点、改善点をフィードバックする“公開コーチング”を実施しました。
この公開コーチングは、とても深い学びが得られるセッションです。
なぜなら、行なったコーチがさまざまな角度でオブザーバーからのフィードバックを得られるだけでなく、参加者も、自分では全く気付かなかった視座からの意見を発見することができるからです。オブザーバーもそのような感想を語った方がいらっしゃいます。
自分では気づかなかった多くの気付き、意見が聴けるということは、自分の中の認知が解放され、多様な思考・認知が得られるということです。そうなると、視野が広がり、その人の資源が形成され、より成長していけますね。視野が広がれば、人生の岐路に立つような重大な局面でも、そこまではいかないが何か選択を迫られる局面においても、1つの方向性を決断する多くの指針を得ることができます。それが、ひいては思考の多様性を育み、レジリエンスにとって最も重要な認知柔軟性を生むことになりますね。

まさに、ポジティブ心理学でいう拡張形成理論が実証されたような時間ではないかなと思います。コーチや参加者のモチベーション向上にも、当然つながると思います。
レジリエンスを強化するいくつかの方法
ブログを書く際にレジリエンスをネットで調べると、Wikipediaに次のような記述がありました。
アメリカ心理学協会では、レジリエンスを築く方法として、次の10の方法を提唱しているようです。
- 親戚や友人らと良好な関係を維持する。
- 危機やストレスに満ちた出来事でも、それを耐え難い問題として見ないようにする。
- 変えられない状況を受容する。
- 現実的な目標を立て、それに向かって進む。
- 不利な状況であっても、決断し行動する。
- 損失を出した闘いの後には、自己発見の機会を探す。
- 自信を深める。
- 長期的な視点を保ち、より広範な状況でストレスの多い出来事を検討する。
- 希望的な見通しを維持し、良いことを期待し、希望を視覚化する。
- 心と体をケアし、定期的に運動し、己のニーズと気持ちに注意を払う。
私が集合型やオンラインの企業研修で実施しているレジリエンス研修は、上記の10の方法がほぼ全て組み込まれています。改めて自分の実施しているレジリエンス研修は、ずれていないことを認識しました。
特に「1.親戚や友人らと良好な関係を維持する。」は、資源が拡張形成して人が成長していくことにつながりますね。コーチング勉強会の公開コーチングでの仲間から得られる多様なフィードバックが良い例です。
他者は大切(other people matter)
ポジティブ心理学の創始者の一人で、2012年、惜しまれつつも早逝されたクリストファー・ピーターソン博士の有名な言葉に、
「他者は大切だ(other people matter)」
があります。私も大好きな言葉です。
ピーターソンは、著書の中で、次のようなことを書いています。
『私たちが喜びを経験するのは多くの場合、他者といるときであり、その喜びの余波もまた、他者と共有されるときに最も味わい深いものとなる。多くの人は、「感謝」といった他者とのつながりを強める“人格の強み”を通して人生の中に満足感や意義を見出すことができる。仕事にしろ、愛情を抱くにしろ、何かを楽しむにしろ、そこには常に他者の存在がいる。』(「幸福だけが人生か?」より)
私たち人間は、とても弱い生命体で社会的生物ですので、他者との共存がなければ本来生きていけないものなのです。そして、自分の人格、アイデンティティ、自分らしさ(authenticiy)を認識するのも、実は、他者の存在が必要になってきます。さらに、私たちの幸福感というのも、何らかの形で他者との対人関係から生まれてくるものではないかと思います。
ピーターソンの「他者は大切だ(other people matter)」は、人生における親戚や友人との良好な人間関係の重要性に気づかせてくれる大事な言葉だと思っています。
アドラーの社会統合論
他者との交流を通して自分の人格、アイデンティティ、自分らしさ(authenticiy)を認識するということは、アルフレッド・アドラーも説いています。
アドラーは、その人のライフスタイル(人生における基準、価値観のような概念)は、他者との関係の中でつくられると主張しています。よく考えればそうですよね。自分が自分と認識できるのは、自分が他者といるときで、他者と行動を共にしたり、会話をしたりすることによって、「ああ、自分の意見は、この人たちと違うんだな」と気づくことになります。
アドラーは、この考え方を「社会統合論」と呼んでいます。
人は、社会の中の対人関係に組み込まれている存在であり、社会と隔絶して一人で生きていくことはできません。社会の中で自分自身を発達させ、成長させていくのです。「自分探し」のために一人旅に出ても、自分自身を理解することは難しく、自分を探すことはできないでしょう。なぜなら、自分を探す最も有効な手段は、他者とのつながりにあるからです。
他者は重要なレジリエンス資源
他者との対人関係は、私たち人に、気づかなかった気づきを与え、視野を広げ、認知柔軟性を生むだけでなく、私たち自身の価値観やアイデンティティを認識させる重要な存在です。とても貴重なレジリエンス資源となります。
皆様は、友人や親戚、職場の同僚、地域の仲間と良好な人間関係を築いていますでしょうか?いざというとき手を差し伸べてくれる親友や愛する人はいらっしゃいますでしょうか?
次回のブログでは、レジリエンス資源としての他者との良好な人間関係の築き方について少し触れてみたいと思います。ただし、ブログのテーマは、諸事情(多くは筆者の気まぐれ)により、変更になる場合もございます。予めご了承くださいませ。